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洋学

『佐賀医人伝』校了

2017年02月17日

 洋学 at 06:09 | Comments(1) | 医学史 | 科学史 | 漢方医学 | 洋学 | 文化史 | 地域史 | 日本史 | 種痘 | 蘭学
『佐賀医人伝』校了
三年越しの『佐賀医人伝』、ようやく今朝、最終原稿犬尾文郁とあとがき原稿を提出しました。今から10年前の某月某日、4人で磯寿司で医学史研究会を作ろうと旗揚げしてから、平成18年(2007)12月22日に佐賀医学史研究会が発会しました。平成20年(2009)6月には、佐賀市で第一一〇回日本医史学会総会を開催し、その際に、『佐賀医史跡マップ』を刊行し、県内の医史跡と医人を紹介しました。それから、毎年、本会は、例会と県内外の医史跡巡りを通じて、医人調査も続けてきました。その積み重ねのうえに、『佐賀医人伝』刊行の構想が生まれました。
 本書は、30人近くの執筆者の共同研究の成果で、127人(関連人物をいれると200人近くなります。そのうち青木執筆分はなんと72人でした)の略伝集です。皆それぞれ、できるかぎり子孫の方や史料所蔵者に連絡をとり原史料から読み解き、また、佐賀だけでなく京都や東京、長崎などの各地のお墓にお参りして、生没年月日を正確に把握するなど、汗を流して足で稼いで執筆しました。
 本書から、佐賀地域の大陸に近い地理的特性から、古代から進んだ大陸文化を取り入れ、地域の生活に役立ててきた姿が医学の面からもうかがえます。古くは伝説的な徐福をはじめ、佐賀藩初代藩主鍋島勝茂に仕えた朝鮮出身医師林栄久や、蓮池藩に仕えた鄭竹塢などが、大陸・朝鮮の先進的医術や文化を佐賀地域に伝えてきました。
 江戸時代にいってもは黄檗宗や中国の出版文化などが、佐賀地域に入り、全国に広がった例も多くみられます。また、長崎警備を担当した佐賀藩は、大陸文化だけでなく、オランダ通詞楢林鎮山やその子孫の楢林栄哲らを通じて、横尾元丈、上村春庵、佐野孺仙らが西洋医学を取り入れ、島本良順(龍嘯)が蘭学を発展させました。 
 江戸時代に最も恐れられていた感染症である天然痘予防の牛痘法の導入は、佐賀藩医の伊東玄朴、牧春堂、大石良英、楢林宗建、島田南嶺らの連携と藩主鍋島直正の後押しによって成功し、佐賀・長崎から全国へ普及することになりました。
 佐賀藩の試験による医師開業免許制度は、現代につながる医師国家試験制度の先駆であり、安政5年(1858)には、江戸時代におけるわが国最大の西洋医学校好生館が開設され、そこで育った相良知安や永松東海らが中心になって、ドイツ医学の導入や医制など、わが国の近代医学・薬学制度の基礎を築きました。
 また本書には、現代の東京女子医大のもとをつくった吉岡弥生(夫の吉岡荒太が佐賀県出身)、佐賀県最初の試験合格女医緖方トキ、太良町に図書館をつくった大橋リュフなどの女医も登場します。
 グローバル化が叫ばれる現代だからこそ、先人たちが、佐賀の地域特性に合わせて、海外の先進文化を取り入れて、地域の発展と医療の向上のために尽くした姿に学び、さらに、地域の個性を磨くことが必要なのではないでしょうか。
 本書を、先人たちからの贈り物として、皆様の座右に置いていただけると幸いです。
 なお、本書は、佐賀新聞社発行(ISBN978-4-88298-219-7、2017年2月25日発行)で一般書店でも1500円プラス税で購入いただけることになりました。


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この記事へのコメント
古写真の研究をしています。相良知安に関心があり、佐賀にも何回か寄せていただきました。今回相良隆弘さんから本書をいただき、大事に読んでいます。大変な努力の結晶だと思います。ただし、古写真の研究者として気になる点があります。詳しくは、相良さんにお伝えしましたが、248ページの写真はA.F.ボードインの大阪医学校での集合写真です。ご確認ください。
Posted by 高橋 信一 at 2017年03月04日 22:13
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